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傷つき暴走するミラーニューロン

  • Writer: yu ichinose
    yu ichinose
  • Aug 12
  • 16 min read

Updated: Aug 15



傷つき暴走するミラーニューロン


フィニアス・ゲージの脳と「回避型エンパス」の生存戦略

                   一ノ瀬ゆう

【第1幕:日常の謎と、誰にも言えない孤独】

 

 あなたは朝、バックヤードのデッキで淹れたばかりのコーヒーを飲んでいます。青い小鳥が飛んできました。フェンスの裏の木に止まってこちらを見ています。あなたは小鳥になります。空を見上げると、青い空に白い丸い雲が浮かんでいます。あなたは雲の気持ちになります。風があなたの頬を撫でていきました。あなたは風になります。木製のフェンスをトカゲが上っているのに気が付いて、「おはよう」と心の中で声を掛けます。背中に日が当たって気持ちいいねと、自分も気持ちが良くなります。虫や蝶がよくあなたの体に止まります。


 あなたは、旅行先で見知らぬ街の悲しい空気を感じます。戦国時代の宝物館には入れません。磨き抜かれて今でも光り輝く刀剣や甲冑に、血の匂いと戦いのシーンを体で感じてしまうので。川や池も、苦しく感じる時があります。瀬戸大橋を渡って急に空気が透明になり、瀬戸内海を照らす太陽の光が、一粒一粒の粒子のように見え、四国の木々を渡る風と下草がダンスをしているのを見ます。


 人と一緒にいて楽しいけれども、そもそもその場に入った時から、何かエネルギーが侵入してきて圧倒されます。人は皆、社会でうまく暮らすために、本当の自分のどこかを隠しているのを感じます。あるいはその人自身は何も意識していないかもしれないことに、あなたは自動的に同調します。


 人のニーズが心の中に入ってくるので、まずはそれを満たそうとしているうちに、自分のニーズが何か分からないまま生きてしまっているでしょう。


 相手の表情が変わるより前に、まだ笑顔を見せているその間に、その場の空気が凍りつくのがわかるでしょう。


 笑顔で『大丈夫』と言っている人の、胸の奥のドロドロとした焦りや怒りが、自分の身体に流れ込んでくるでしょう。


 この人は家では奥様に暴力を振るっているなとか、なにも証拠はありませんが、あなたは感じます。


 町ですれ違う見知らぬ人の苦しみを感じることもあるでしょう。


 スーパーのレジに並ぶ時、あのレジの女性から出ているエネルギーが好きだから、そこを選ぶでしょう。


 外出したあなたは、周りの人の感情のエネルギーの海に浸って、へとへとになって帰宅するでしょう。


 人混みや雑踏があなたは苦手です。たいてい後で頭痛がします。見知らぬ人へ向ける素の顔と素の心に、取り繕わない暗い影を感じるでしょう。


 あなたにとって家は美しい聖域なので、あなたは家をとても綺麗に飾るでしょう。あなただけの家は平和で満たされていて、あなたはずっとそこに居て幸せを感じます。あなたは多分、孤独が好きです。


 仲間と楽しい食事やお茶の時間を過ごして帰宅したときは大抵いつも、たくさん食べたのに急にお腹が空いて、もう一度食べ直したくなるでしょう。人との時間は楽しいのに、体はストレスを感じています。


 子供時代に、あるいは大人になった今でも、兄弟姉妹の中であなただけ異質な存在だったり、母親や父親から粗末に扱われたり、いじめられたり、何でもあなたのせいにされたりした人もいるでしょう。


 あなたは人を深く理解したいし愛したいのに、誰も自分を深く理解しようとも深くつながろうともしないことに、いつも傷ついています。

 

 あなたは人から「ウェットすぎる」「情緒的すぎる」「感じ過ぎだよ」「考え方が潔癖すぎる」などと言われたことがあるでしょう。それが悪いことのように思わされて生きてきたでしょう。


 世間には、正直な心が存在せず、全てが表面的だと感じているでしょう。あなたはもっと本質的な話をしたいでしょう。


 もしあなたがそんな感覚を持って生きているなら、毎日を生きるだけで、擦り切れるような疲労感を抱えているはずです。


 世間はあなたを「優しい人」「繊細な人」と呼ぶときもあり、「怒ることあるんですか?」とジョークっぽく聞くこともあるでしょう。でも、当事者であるあなたにとって、それは生ぬるいものではありません。まるで皮膚のない状態で、世界中のトゲに触れているような、地獄のような過敏さです。常に人が放つ感情とエネルギーに圧倒されています。人のエゴを受け取るのは苦しいので、あなたはそこから逃げ回って暴走し続けています。


さらにあなたを苦しめるのは、「この苦しみを、誰も信じてくれない」ということではないでしょうか。


 あなたのピュアな優しさや、人を助けたいという純粋な慈悲の心を、その苦しさと共に正直に打ち明けたり相談したりする時、周囲の人から「立派ぶっている」「偽善だ」と揶揄されたり、嫉妬の目を向けたりされることもあります。あなたは人の気持ちが分かるのに、人はあなたの気持ちが分かりません。分かろうともしてくれません。そう感じます。丸ごと理解しようとしてくれる人がいない事に傷つきます。あなたの苦しみは誰も理解しません。なぜなら、殆どの人の脳には、あなたが受信している「微細な感情のエネルギー」を感じ取る受容体(レセプター)が、最初から備わっていないからです。


 想像できない世界を、人間は「大げさだ」「嘘だ」と否定して自分を守ります。世の中はギブアンドテイクです。人が何かを愛することには理由があります。理由なく愛したいあなたを、ほとんどの人は理解できません。あなたは世界を愛そうとしているのに、世界からは孤立していく。


 それでも世の中には、「無条件の愛の素晴らしさ」を説く人徳者がいます。そんな人が実は「無条件の愛」をもらってばかりで与えたことのない人だと、その苦しみを知らないし知ろうともしない人だと、エンパスは知っています。


そんな圧倒的な孤独の中に、あなたはいませんか?


【第2幕:科学の光――あなたの脳で起きている真実】


 でも、安心してください。あなたのその他者を感じる力、共感してしまう力は、スピリチュアルな気の迷いでも、思い込みでもありません。最新の脳科学(fMRIを用いた脳スキャン研究)[2014年のエースヴェド博士らの実験など]が、その正体を証明しています。


 人間の脳には、他人の行動や感情を鏡のように自分の脳内に写し取る「ミラーニューロン」という神経細胞があります。


 行動を写しとるという点では、よくスポーツ選手がうまい人のプレーを見るだけで、脳内シミュレーションが進んで、その技術の学習が進むという神経メカニズムとして知られています。


 感情を写しとるという点で、エンパスの脳は、このミラーニューロンの感度(感情的共感の感度)が通常よりはるかに高く、かつ、他人からの情報入力を遮断する「フィルター」が極めて薄いことが分かっています。


 あなたが「相手の表情(目に見える結果)が出る前に感情を察知してしまう」のは当然なのです。脳が相手の微細な呼吸の乱れや、筋肉の強張りを一瞬でコピーし、あなたの身体に「胸の苦しさ」や「イライラ」としてダイレクトに出力しているからです。


 ここで少し詳しく説明させてください。


 この実験は、「高い感受性を持つ人の脳の反応」に関するfMRI(機能的磁気共鳴画像法)実験です。

  • 実験内容:被験者に「自分の恋人や配偶者」および「全く知らない他人」の、【幸福な顔】【悲しい顔】【無表情】の写真を見せ、その時の脳の血流量(どの部位が激しく働いているか)をリアルタイムでスキャンしました。

  • 結果:事前に心理テストで「感受性が極めて高い(HSP/エンパスの傾向が強い)」と判定されたグループは、そうでないグループに比べて、他人の表情(特に笑顔や悲しい顔)を見た瞬間に、ミラーニューロンが集まる脳の領域が「異常なほど激しく活性化」していることが確認されました。


 この実験により、エンパスの人が他人の感情に強く同調してしまうのは、本人の思い込みやスピリチュアルな現象ではなく、「脳のミラーニューロンが物理的に過剰反応しているからだ」ということが科学的に証明されました。


 この実験の非常に興味深い点は、エンパスの脳は「見ず知らずの他人の写真」に対しても、ミラーニューロン領域が強く反応したという点です。通常の脳の仕組みでは、愛する人や身近な人に対してはミラーニューロンは強く働くが、他人に対しては反応が弱まる様になっています。


 もう一つの脳科学的根拠をご紹介します。これは「島皮質(インスラ)」の過剰同期です。

島皮質は、脳の中の「自分の身体の内側の感覚(心拍のバクバク、胸の苦しさ、内臓の違和感など)」を自覚する場所です。


 実験において、エンパスの人が他人の苦痛な表情や、痛がっている映像(他人がレンガを足に落とすなど)を見ると、脳のミラーニューロンが瞬時に相手の「痛み」の情報を写し取り、それが島皮質へと直接伝わることが分かっています。


 そのためエンパスは、「相手が苦しそうだな」と頭(理性)で理解する前に、「自分の胸が苦しくなる」「息が浅くなる」という、実際の身体の痛みや不快感として感情をダイレクトに受信してしまいます。


 したがって、脳科学の世界では、エンパスやHSPという性質について以下のように結論づけています。


「彼らの脳は、他人の非言語シグナル(表情、呼吸、姿勢の微細な変化)を脳内でコピーする『ミラーニューロンシステム』の感度(ゲイン)が通常よりはるかに高く設定されている。そのため、外部の感情エネルギーを遮断できず、自動的に脳と身体がシンクロしてしまう」

Dr.Elayne Daniels



 ここで、脳科学の歴史で最も有名な男、フィニアス・ゲージの話しをさせてください。


 19世紀、彼は事故で鉄の棒が頭を貫通し、感情を司る脳のネットワークを失いました。長さ1メートル、太さ3センチの尖った鉄の棒が、彼の左頬から目を突き抜け、頭蓋骨のてっぺんへと貫通しました。前頭葉の眼窩前頭皮質や腹内側前頭前皮質が破壊されました。前頭葉が破壊されたことで、扁桃体からの感情シグナルを脳がうまく処理・統合できなくなりました。


 奇跡的に、彼は意識を失うこともなく、知能や記憶は正常でしたが、驚くべきことに「あらゆる意思決定(決断)」ができなくなってしまいました


 理性だけで物事を決めようとすると、あらゆる選択肢のメリット・デメリットの計算が無限ループに陥り、結局何も決められなくなるということです。ゲージの脳は、感情と理性の連携が断たれたため、計算はできても決断ができなってしまったのです。


 この悲劇から、現代の脳科学は重大な結論に達しました。


「人間が合理的な決断を下すためには、冷徹な理性ではなく、感情のナビゲーション(リード)が絶対に必要である」


 つまり、感情は知性より一段低いものではないということですね。むしろ「感情が知性をリードしている」のが人間の真実です。あなたは、その人生の羅針盤である「感情エネルギー」を、誰よりも高感度でキャッチできる特別な才能を持って生まれてきたのです。


 ちなみにその後のゲージですが、ご心配だと思いますので補足させてください。

彼はその後の規則正しい生活を送る中で、脳の機能(社会性や決断力)をある程度回復させていたことが分かっています。これは脳の「神経可塑性(リハビリによって脳が復活する能力)」の先駆的な例でもあります。


【第3幕:闇の到来――なぜ「悪魔(ダークトライアド)」を引き寄せるのか】


 しかし、この美しく強すぎるエンパスの光は、時としてあなたを破滅の危機に陥れます。

心理学者ユングは「光が強ければ強いほど、影(シャドウ)も濃くなる」と言いました。あなたが「極端な善、清らかさ、自己犠牲の愛」という光に傾けば傾くほど、あなたの無意識の底には、その反動として「冷酷さ、利己主義、怒り」という闇のエネルギーが圧縮されていきます。


 すると、運命は奇妙な強制力を発揮します。自分の中の影を抑圧しているあなたの前に、その影を体現したような人物――サイコパスやナルシシストといった「ダークトライアド(悪魔)」を強烈に引き寄せてしまうのです。


 悪魔と呼ぶのは、ちょっと強烈すぎませんか?とお思いかもしれませんが、実体験から、彼らには人間の魂が無いように思うからです。


 彼らは、あなたの無条件の優しさを驚くほどの精度で見抜き、骨の髄まで搾取しようとします。あなたは傷つき、ボロボロになり、「なぜこれほど人を愛しているのに、こんな目に遭うのか」と、魂の闇夜とも言える深い絶望を味わうことになります。


 ここで非常に興味深く、そして恐ろしい事実を明かしましょう。それは、ダークトライアドの脳に関する研究です。


 結論から先に申し上げますと、彼らのミラーニューロンや島皮質は、「反応しない」のではなく、「自動的には作動しない(スイッチがオフになっている)」あるいは、「全く異なる目的のために作動している」というのが、現代の脳科学の結論です。


 2013年にオランダのForensic Clinic (法医クリニック) で行われた、本物のサイコパスの犯罪者を対象とした有名な fMRI (脳スキャン) 実験があります。

  • 実験内容:他人が暴力を振るわれ、痛みに耐えている映像(手が押しつぶされるなど)をサイコパスたちに見せ、脳の動きを観察しました。

  • 最初の結果(通常時):ただ映像を見ているだけの時、彼らのミラーニューロンや、他人の痛みを自分の身体の痛みとして感じる島皮質は、ほとんど反応しませんでした。つまり、通常の状態では、他人の苦痛に対して脳が自動的にシンクロ(共感)することはありません。

  • 次の結果(「共感してみて」と指示した時):次に、研究者らが彼らに「映像の中の人がどう感じているか、意識的に想像(共感)してみてください」と指示しました。すると驚くべきことに、彼らのミラーニューロンと島皮質が、一般の人と全く同じようにあるいはそれ以上に、激しく点灯したのです。


 この実験から、彼らは「共感する能力が物理的に壊れている」のではなく、「共感のスイッチを普段はオフにしており、必要な時だけ意図的にオンにできる(あるいはその逆ができる)」という、常人離れした脳の制御力を持っていることが分かりました。


 ではいつ、彼らはそのスイッチをオンにするのでしょうか。


 ダークトライアドが「共感のスイッチをオンにする」のは、相手を思いやるためではありません。「相手を効率よくコントロール(搾取・マニピュレート)するための情報収集のためです。


心理学研究によると、

  • ターゲット(例えば純粋なエンパス)を見つけた時、彼らは脳のミラーニューロンを意図的に作動させ、相手の微細な表情や呼吸、欲求(愛されたい、認められたいという願い)を高解像度でスキャンします。

  • そのデータを前頭葉(知性)で処理し、「こう言えばこの人は喜ぶ」「こう突き放せばこの人は焦る」という、完璧なマニピュレーション(心理誘導)の戦略を立てます。



更にもう一つダークな研究報告をお伝えしましょう。

 

 一般の人間は、他人の悲しみや苦痛の表情を見ると、島皮質や前帯状回が反応して「不快・胸が痛い」というシグナルをアラームのように鳴らします。


 しかし、ダークトライアド(特にサイコパス傾向の強い人)の脳の構造(灰白質の容積など)を調べた2020年代以降の最新の脳解剖研究(MRIスキャン)では、島皮質や、感情のブレーキをかける眼窩前頭皮質などの領域が物理的に委縮している、あるいは脳の報酬系(快感を得る回路)と異常な結びつき方をしていることが確認されています。


 そのため、彼らの脳は他人の「恐怖の表情」や「苦痛の叫び」をミラーニューロンで正確に読み取ったとしても(=相手が苦しんでいるという事実を100%理解していても)、島皮質がそれを「かわいそう」「不快」とは処理しません。


 むしろ、「他人が自分の思い通りに苦しんでいる(=支配に成功した)」という、脳の報酬系(快感・達成感)のスイッチを入れることすらあるのです。


 エンパスが、個性化の途上でダークトライアドに出会うとボロボロにされるのは、彼らがこの「共感スイッチを手動で切り替え、こちらの心のセキュリティをすり抜けてくる天才」だからです。



【第4幕:覚醒と進化――「回避型(アボイダント)」という聖域】


 ダークトライアドとの出会いと死闘の闇を経て、あるいは過去の人間関係(毒親、モラハラ、失恋など)で深く傷ついた結果、疲れ果てたあなたは、ある行動に出ます。


 それは、すべての人との繋がりを断ち切り、心を冷酷なまでに閉ざし、部屋に引きこもる――心理学でいう「アボイダント(回避型)」への変貌です。それは、自分を守るための頑丈な「鎧」として自ら選択する防衛モードです。


 かつてのあなたは、他人に優しくできない自分を責めたかもしれません。「逃げてしまった」「冷たい人間になってしまった」と。


 しかし、これこそがユングのいう「個性化(魂の成熟)」へ向かうための、最も理にかなった進化のプロセスなのです。


 今のあなたは、ただ傷つくのが怖くて逃げているのではありません。「私の共感力や優しさは、他人から搾取されるだけだ。もうだれも私の心には入らせない」という決意の表れです。他人の感情に圧倒されていた暴走モードを止め、自分の中の「冷酷さ(シャドウ)」を認め、「自分を守るために、人を切り捨てる強さ」を身につけようとしているのです。


 もし今、あなたが人間関係に疲れ果て、殻に閉じこもっているなら、自分を責めないでください。あなたは退化しているのではありません。本物の強さを手に入れるために、進化している途中なのです。


 引きこもるという「回避」の期間は、あなたの脳と魂が、新しい防衛システムを構築するための聖なる隔離室です。


【結び:新世界への旅立ち――あなたの回避は、聖なる盾である】


 防衛モードである「アボイダント(回避型)」への変貌により、個性化を果たしたエンパスは、もうかつての無防備な被害者ではありません。


 あなたのミラーニューロンは、相変わらず相手の闇を秒速で察知するでしょう。しかし、今のあなたには「強固な心の境界線(鎧)」が構築されています。


 個性化を果たしたエンパスの回避は、ミラーニューロンで相手のエネルギー(悪意、依存心、ダークトライアドの気配)を察知した瞬間に、「これ以上、私の聖域(パーソナルスペース)に入らせない」と境界線を下ろして、相手を締め出す(シャットアウトする)行動です。関わりを「拒絶し、回避する」のです。


 かつてのエンパスは、誰にでも優しく、全員を受け入れようとしてボロボロになっていました。しかし、個性化(影との統合)を果たしたエンパスは、自分の内にある「冷酷さ」や「非情さ」というシャドウを認め、味方にしています。そのため、この人と関わると自分が削られると判断すれば、罪悪感を持つことなく、冷徹に連絡を絶ったり、物理的に距離を置いたり(回避)することができます。徹底的に自分を守れる人間になります。他人から見れば、その姿は「冷たい回避型の人」そのものです。あなたの共感や愛情から恩恵を受けていた人の多くは、そんなあなたを「冷たくなった」と非難するでしょう。それでもあなたは何も感じません。


 心理学で言う一般的な回避型は、「人が怖い、傷つくのが怖い」という恐怖(感情)に突き動かされて逃げる行為を指します。けれども、個性化したエンパスの回避は、「この人のエネルギーは有害だ」という分析(知性)に基づいて、自ら進んで距離を置く選択をするのです。


 その両者に現れる行動(連絡を返さない、深く付き合わない、一人の時間を好む)は同じ「回避」ですが、その根底にあるのは「弱さ」ではありません。フィニアス・ゲージの例でも見たような「感情のナビゲーションを正しく受け取った知性による、合理的な決断」なのです。


 個性化を果たしたエンパスは、「いつでも自由に、かつ意図的に使える『回避のスイッチ』」を手に入れました。それは、ダークトライアドの「共感のスイッチ」に対抗して働き、自分を守り抜くことができます。


 したがって、この強固な境界線は、「エンパスが人生を主体的に生きるための、最も洗練された形の回避(アボイダント)」と言えます。


 「高次な回避(アドバンスド・アボイダント)」と呼ぶにふさわしいものでしょう。それは、あなたの才能を守り、社会と健康的な距離を保つための「戦略的で機能的な回避」です。


 エンパスであるあなたの「回避(境界線)」は、冷酷さではありません。あなたがあなたとして生きるための「聖なる盾」なのです。


 その鎧をまとったとき、あなたの高すぎる共感力は、誰かに搾取される弱点から、世界を正しくナビゲートする「最強の武器」へと変わるでしょう。



 
 
 

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